●集客の極意


ナポリの大道芸人の話。

3人組の芸人が広場の真ん中でラッパを吹いた。
なにごとかと思って、ぶらぶら歩いていた市民や観光客が足を止めた。

数人の立ち止まった人たちに向かい、芸人は声をかけた。
「ないしょの相談がある。この広場にいる人たちを、みんなでだましてみないか!」
そう言うと、芸人たちは大声で笑い出した。
そして、ぽかんとする人たちに声をかける。
「さあ、みんなもいっしょに、笑って、笑って!」

高笑いにつられて、周囲の人々も笑い出した。
芸人はさらに声をかける。
「まだ声が小さい!さあ、もっと大きな声で!」

広場の中央で、大道芸人と観光客たちが大笑いしている光景に、
広場の周囲にいた人々が不思議がって足を止め、近寄ってきた。
すかさず芸人のリーダーが周囲に声をかける。
「ほら、だまされて近寄ってくるやつらがいるぞ!」
それがおかしくて、笑い声はさらに大きくなった。

広場の周囲から集まってきた人たちは、そこまでやってきて、
「なんだ、ただ笑っているだけじゃないか。
 そうか、みごとにだまされたんだ!」
と気づく。それにあきれて、つい笑ってしまうが、
その笑いにつられて周囲から人が近づいてくる様子を見ると、
今度は自分もだます側に回る。

こうして笑いの輪は50人、100人と増えてくる。
そして観客が笑い疲れたころに、いよいよ大道芸が始まる。
大道芸は大受けすることは間違いない。
なにしろ、笑う練習は十分できているし、
大道芸人と観客、そして観客同士にいつの間にか連帯感が生まれているからだ。


まずは傍観者の数人を味方につける。
そこに人の集まりがあると、さらに人が寄ってくる。
『人が人を呼ぶ』効果だ。

そして、芸人と観客、それと観客同士の連帯感づくり。
もはや芸のレベルに関係なく、大きな盛り上がりがそこに生まれることになる。

「大道芸と商売は違う!」
などといわないで、
みごとな大道芸人の集客術に、大いに学ぼうではないか。

(参考資料 「究極の集客術・企画術」松井 渉 著)