《第98話》
ゾーニングの盲点
ゾーニングは、いろんなジャンルで使われている用語です。売場の棚割を決める。住宅の間取りを検討する。未成年に過激なビデオの販売や貸出を規制する。このような、『区分』する行為はいずれも、ゾーニングと呼ばれるものです。
でも、たぶん真っ先にイメージするのは、まちづくりにおけるゾーニングでしょう。市街地活性化計画で、エリア内を商業ゾーン、ビジネスゾーン等に区分する手法であり、多くの計画に盛り込まれているものです。
同じ機能を一箇所に集めて、魅力や利便性を高める。それによって、中心市街地を昔のように活性化させる。その考えは、十分理解できるものです。しかし各地の例を見ていると、ゾーニングでの活性化は、それほどうまくいっていないように見えます。何か見落としがちな、盲点がなかったでしょうか。
まちづくりが主眼
ゾーニング手法での活性化がうまくいかない場合、四つの理由が考えられそうです。
一つ目は、中心市街地に商業ゾーンを設けても、郊外出店に歯止めはかからないこと。自治体全域に網をかける制度や行政方針がないかぎり、工場跡地利用や農地転用等による大型店出店をくい止めるのは困難です。
二つ目は、小都市の場合、ゾーニングに盛り込めるコンテンツが少ないこと。何々ゾーンと名前は仰々しくても、中身が伴わなければ名前負けして、貧弱なゾーンになります。
三つ目は、既存の商店街が商業ゾーンと名前を変えても、集客力にはならないこと。集客パワーが落ちた現状を認識し、自分たちが変わらないことには、意味がありません。
四つ目は、商業地対策が主目的になりがちなこと。計画はあくまでも、まちづくりが主眼であり、商業活性化はその一部です。だからこそ住民の賛同も得られるし、税金をかけてまでも実施すべき事業なのです。
都市計画と建築の専門家だったル・コルビュジエは、『輝ける都市』の中で職・住・遊空間を分離して、各エリアを広い道路と交通網で結ぶ機能的なまちを構想しました。その辺がどうやら、ゾーニングのルーツでしょう。それに対しジェーン・ジェイコブスは正反対の、「エリアを単機能(つまりゾーニング)にしてはいけない」「道路を拡幅してはいけない」などの、都市の四原則を提唱しました。つまりゾーニングにも賛否両論あり、必ずしもまちづくりに絶対欠かせない手法、というわけではなかったということです。
ユニバーサルデザイン
個店が顧客ターゲットを設定するように、ゾーニングでのターゲット来街を期待するのはどうでしょう。巣鴨地蔵通りがおばあちゃんでにぎわうように、大都市なら可能かもしれません。でも商圏の小さい地方都市の場合はたぶん無理。それよりは「誰でも来やすいまち」を目指すべきでしょう。たとえば、青森駅前の新町商店街が参考になりそうです。
青森市のコンセプトはコンパクト・シティ。まちの中心に機能をぎゅっと詰め込んで、便利で快適なまちなかを創造するものです。そこで新町商店街の理念は、ユニバーサルデザイン。高齢者、子供、観光客、みんなにやさしいまちになれば、来街の敷居が低くなり、みんな気軽に足を運んでくれそうです。だから、まちは誰にとっても訪れやすいことがポイント。ターゲット設定は、個店がそれぞれ考えればいいことです。
さてあなたのまちで、活性化にゾーニング手法を使うなら、盲点を見落とさないことです。そして粘り強く取り組みましょう。「活性化に失敗した」という声もよく聞きますが、それはたいてい失敗したというよりは、成功するまで辛抱して続けられなかったというだけの話です。