《第101話》
“負け組”の逆襲
商業界、製造業界から勤労者の世界にまで、「勝ち組」「負け組」という明確な二極分化が見られます。背景には、経済の停滞が引き起こすゼロサム(合計ゼロ)傾向が挙げられるでしょう。簡単にいえば、麻雀での点棒の奪い合いのようなもの。一方に高収益の人がいれば、必然的に反対側には収益の低い人も、収益がマイナスの人もいるということです。
商業の世界では、コンビニチェーン本部や大手ドラッグストア、ネット市場での繁盛店などが、勝ち組と考えられるでしょう。そしておそらく、業績の低迷する商店街や零細商店主の中には、自らを「負け組」と自嘲気味に語る人もたぶんいることでしょう。
もちろん商店街の中にも、勝ち組の手法に学び、成功を目指す人はいます。でも残念なことに、後発組が成功者の仲間入りできる可能性は、そうは多くないはずです。なぜなら成功のおいしい部分は、もうほとんど勝ち組に独占されているからです。
では「負け組」の活路はどこに探せばいいのでしょうか。それはひょっとしたら、案外近くにあるのかもしれません。
花見の裏方
花見の時期、多忙になる人たちがいます。ホームレスです。花見の準備で苦労するのが、場所の確保。その場所とり代行をビジネスにするものです。なにしろホームレスには、時間だけはたっぷりあるのですから。
しかも場所とりだけではありません。花見が終わった後の面倒な後片付けもビジネスになります。その上食べ残し、飲み残しもありがたくいただけるというわけです。まさに花見時は、ホームレスの稼ぎ時です。
花見客から見れば、そういう姿には内心、軽蔑を感じるでしょう。でも、そういう視線に耐えることさえできれば、ホームレスでも生きていけるということです。
経営者の地位からホームレスに転落し、そしてそこから再出発した堀之内九一郎氏は、リサイクルショップ『生活創庫』をフランチャイズ展開して、百億円産業にまで成長させました。堀之内氏は著書の中で、ホームレス体験を振り返り、「どん底に落ちたから気づいたこと、どん底だから湧いてくる知恵があった」と記しています。
堀之内氏の立ち直るきっかけは、捨てられているストーブを修理し、ピカピカにして販売したことでした。ホームレス暮らしの周囲にあるゴミを再生させ、それで人々が喜んでくれる姿を見たことが、現在の快進撃の原点。成功のカギは、まさに目の前にあったことになります。
蜘蛛の糸を捨てろ
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』は、極楽から垂らされた細い蜘蛛の糸に、地獄の人々が飛びついて糸が切れるという話。勝ち組を目指す人はこれと同じように、極楽を見上げて細い糸をよじ登るようなものかもしれません。運良くたどり着ける人も中にはいるでしょうが、大半は途中で力尽きて脱落しそうです。
そこで、勝ち組をうらやましそうに見上げるのをやめて、自分のいるフィールドをもう一度見つめなおしてみてはどうでしょう。壊れたストーブから百億円産業を築いた人がいるように、零細商店を取り巻く厳しい商業環境の中にも、商いのチャンスはきっとあるはずです。それを見つけるには、これまでの常識を捨てること。そしてそれを実践するには、これまでのプライドを捨てることです。
常識やプライドをかなぐり捨てる勇気があれば、何にでも挑戦できます。そして勝ち組にはプライドがあるから、そのまねはできません。そう、それは「負け組」とみなされがちな商店街や零細商店からの、勝ち組に対しての逆襲になるのです。