《第105話》

リスクの扉を開け


 企業の危機管理能力が求められる時代です。といっても、危機とは災害や犯罪などのアクシデントだけではありません。たとえば新規事業失敗などで、経営を危うくする企業もたくさんあります。あるいは景気予測の読み違えも、致命的な痛手になりかねません。

 ダイエーの場合、自前の価格破壊路線がバブル崩壊に対処できなかったことと、球団所有などの多角経営に手を出したことが、経営危機を招きました。新しいことへの挑戦で先頭を走ってきた企業のつまずきを見ると、新規事業につい二の足を踏むかもしれません。

 でもたとえば、世の中の危険を避けるために、外出を控える暮らしをしたとしたら、どうなるでしょう。それなら事故に遭う危険はほとんどありません。でもその代わり、新しい出会いが生まれることもないでしょう。

 今の時代、業績アップを図るなら、新規事業へのチャレンジは有効な方策です。そこには、少なからずリスクもつきまといます。そのリスクを承知で、そこに立ち向かう勇気のある人だけが、大きな成功を手にすることができるのではないでしょうか。

破たんリゾートの再生

 本誌10月号で紹介された『星野リゾート』(長野県軽井沢町 代表取締役・星野佳路)は、経営が行き詰ったさまざまなリゾートの再建に携わってきました。リゾナーレ(山梨県)、磐梯リゾート(福島県)、アルファリゾート・トマム(北海道)と、経営破たんしたリゾートが軌道に乗り、活性化への道を歩スキー場みつつあります。

 星野社長は、「誰に対し何を提供するかのコンセプトが明確であれば、再生は可能です」と自信を持って言い切っています。ターゲットを絞り込み、そこにアピールする“特徴”があれば、集客は可能ということ。その主張が正しいことは、手がけてきたリゾートが再生への道を歩いているという事実が証明しているでしょう。

 星野リゾートはもともとは、1904年創業の軽井沢の温泉旅館でした。でも、リゾート法ができた時、大手企業や第三セクターが次々とリゾート経営に参入。それに脅威を感じ、生き抜く方法を追求したものです。

 大手は「開発」と「所有」はお手の物。ただ、もっとも肝心な「運営」は、大手にはそのノウハウはないでしょう。「運営」に特化すれば、大手を敵に回す必要がなく、独自のフィールドでのオンリーワンの地位を築けます。そうして星野リゾートは“リゾート運営の達人”と呼ばれ、再生の請負人として着々と成果を築いてきたのでした。

リスクは避けられる

 リスクとは本来、「注意すれば避けられる可能性のある危険」を指します。たとえばまちを歩く際、信号無視の車が横断歩道に進入してくるのがリスク。こちらが交通ルールを守っていても、事故に遭う危険は決してゼロではありません。でも注意深く周囲を観察することで、危害を受ける率は、かぎりなくゼロに近づけられるでしょう。

 星野リゾートは、リゾート法を目の前にした時、起こり得るリスクを予測し、みごとにクリアしたところから、快進撃の道を歩み続けているものです。リスクから逃げるのではなく、しっかり見切ってかわすことが、肝心なのでしょう。

 破たんリゾートの再生は、極めてリスクの大きい業務です。それさえ成功に導いているということは、リスクの扉を慎重に開き、危機を見切ってかわせば、その先に道は開けるということではありませんか。リスクに立ち向かうのは、たしかに勇気のいること。でも立ち向かう勇気のある人だけが、リスクの先にある成功の果実を手にできるのでしょう。






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