過去を掘り起こせ
初めて訪れた商店街でも、「他のまちの商店街と似ているような気がする」と感じることがありませんか。考えてみれば、それは当然。ファサード(店舗外観)、アーケードやカラー舗装などで先行した商店街を見習って、似たような成功モデルを追い求めた結果です。似たような駅前、似たような市街地風景が増えたのは必然の結果でしょう。
まちなかだけではありません。ナショナルチェーンの、郊外出店ラッシュにより、ロードサイドの風景まで画一化してしまいました。大型看板、深夜まで営業する店舗が立ち並ぶ光景は、まさに全国が金太郎飴状態です。
しかし、先進性、機能性を求めた結果はどうでしょう。便利だけど、楽しくない。それが多くのまちに見られる商業集積の姿です。そこで、その対極に位置し、クローズアップされてきたのが、過去の再現。新しさではなく古さの価値が、見直されているのです。
過去が注目されている

豊後高田市(大分県)が、「昭和」にこだわった商店街づくりで、多くの観光客が訪れています。ホウロウ看板、丸ポストなどから、各店で販売する商品まで、なつかしさを感じさせるものであふれています。戦後の、貧しかったけど、元気があった時代の思い出がよみがえるので、訪れる人々の顔には、自然と笑顔が浮かんでくるものです。
これまでも川越市(埼玉県)、喜多方市(福島県)など、古い街並み、蔵のある景観が、観光客を集める実績はありました。豊後高田市はそこに「昭和」をキーワードにして加わった形でしょう。また東京でも、“江戸”への関心が強いものです。歴史をさかのぼる小さな旅、というのが、根強いニーズとして定着しているものでしょう。
商業のサービスにまで、過去を復活する事例が生まれました。ポイントカードを廃止して、スタンプ事業を開始したものです。
これまでは、スタンプは時代遅れ。新時代のトレンドはポイントカード。そうして、スタンプを廃止し、カードに切り替えたところがたくさんありました。しかしカードにしたことで、顕著に業績が上がった事例はほとんど見られません。そこでA県のショッピングセンターPが、ポイントカードを廃止して、スタンプ事業を10月から開始したもの。スタンプなら、「カードをお持ちですか」という必要がないので、フリー客にも対応可能。個店イベントへの柔軟な活用も可能。しかも、機械のリース代もメンテナンス経費もかかりません。この『先祖がえり作戦』、今後の推移が大いに注目されます。
らせん階段を進め
江戸や昭和が注目を集めているとはいっても、もの珍しさだけでは、いずれ飽きられるでしょう。単に過去を再現するのではなく、現代に合った工夫は必要です。老舗の家訓に「伝統とは改革の連続である」という言葉があります。伝統のイメージを崩さずに、時代に合った変革を導入すべきなのでしょう。
過去を掘り起こして資産として活用するのは、らせん階段を進むようなものです。なつかしい風景には戻るけど、まったく同じ状態に戻るのではなく、現代の消費者の需要を見据えた工夫を加えること。そしてワンランク上の段に進むこと。変わっていないように見えて、変わっていることが大切です。
衰退した商店街も、「人情」など、見捨てられてきた過去の資産を生かす手がありそうです。ただし改革は、現代にマッチしたものでなければいけません。だから目標は、商店街づくりではなく、ネオ商店街づくり。便利で、楽しく、わくわくする、古くて新しい商店街。どうです、そういう商店街があれば、ブラブラ歩いてみたいと思いませんか。