新コンペイトウ理論
商店街での懇談会の後、ある商店主の方がこそっと私に話しかけてきました。
「私は店の業績を回復させたいんです。だからどうすればいいか教えてほしくて、地元のコンサルの先生に何度も来てもらいました」
そこでその商店主は、小さくため息をついてから、こう付け加えました。
「たしかにうちの店には、ダメな点がいっぱいありました。それを徹底的に指摘されましたので、頑張って改善しました。でも…。売上は期待したように上がらないんです。私の努力が足りないんでしょうか?」
コンサルタントの中には、“あら探し”と感じられるほど、店の欠点を厳しく指摘する方もいます。品揃え、接客、清潔さなどが低レベルでは消費者に敬遠されますから、もちろんそれは、店にとっては必要なアドバイスだったでしょう。
ただ問題は、欠点を直せばお客様が戻ってくるとは言い切れないことです。欠点をすべて取り除いたとしても、集客力が生まれるという保証はありません。だからそんなときは、発想の転換が必要かもしれません。
ツノを削ると…
昔から日本には、コンペイトウというお菓子がありました。砂糖を固めた、ツノのあるお菓子です。そして、その形になぞらえた『コンペイトウ理論』が、経営指導などいろんな場面で活用されてきました。
コンペイトウ理論とは、「ツノを削れば、コンペイトウは丸くなる」ということです。店舗の欠点は、いわばコンペイトウのツノのようなもの。ファサード(店舗外観)、品揃え、接客など、欠点はいろんな箇所に突き出すものです。四方八方に伸びたそれらの欠点に気づき、改善していけば、ツノの消えた後には、きれいな丸い球ができることになります。
ただし、ツノを削ってできる球は、どうでしょう。削った分、最初のコンペイトウより小さくなります。だから大きくアピールするには程遠い状態になってしまいます。
ではどうしたらいいのでしょうか。それは、ツノを削るよりも、谷を盛り上げること。谷の部分にあたるのは、店の長所です。谷の部分である店の長所を伸ばせば、ツノとの差が縮まり、次第にきれいな球形に近づいてくるでしょう。しかもそれは、最初の大きさより、谷が埋まった分、大きいものになります。それが、コンペイトウ理論の核心です。
そこで店舗の運営では、まずは家族や従業員同士、お互いのいい点を認め合うことから始めてはどうでしょう。誰だって、欠点を指摘されるのはいやです。そして長所をほめられるのは、うれしいものです。長所を評価され、その部分が伸びれば、店の姿は次第にきれいな球形に近づいてくるでしょう。しかも、前よりずっと大きく成長しているはずです。
特色のツノを伸ばせ
日本唯一のコンペイトウ専門店『緑寿庵清水』は、もち米を細かく砕いた粉を核にして、回転する釜の中で時間をかけて、コンペイトウを少しずつ大きくさせていきます。ツノはその過程で自然に成長するものであり、きれいなツノを成長させることもまた、熟練の技の成果。ツノは本当は欠点ではなく、じっくり育てる、大切な特色だったのでした。
従来のコンペイトウ理論では、ツノ=欠点という見方が一般的でした。でも本来の製法からすれば、ツノ=特色という考え方もできそうです。その発想を、店づくりにも応用できないものでしょうか。
すなわち、店の欠点を削るより、長所を伸ばすこと。そしてその過程で芽生えてきた特色は、素晴らしいツノとして伸ばしていくこと。どうです。それを店づくりの『新コンペイトウ理論』として実行してみませんか。