《第112話》
長い尾をつかめ
多くの業種同様、商業にもセオリーというものがあります。俗に「二・八の法則」と言われるパレートの法則なども、名前を知っている、知らないにかかわらず、経験則として身についている方が多いでしょう。
「二・八の法則」とは、二割が八割を決定するという法則です。たとえば、売上の八割は二割のアイテムで達成される。年商の八割は二割の顧客の買い上げによる。クレームの八割は二割の商品・サービスに起因する、など。二割が八割を決定するというこの法則に基いて、商品構成を検討するABC分析も行われているものです。
これをシンプルに言うなら、売れる商品をたくさん売り、売れない商品は撤去する、ということになります。売れ筋商品は大量に陳列して、品切れを起さない。売上に貢献しない商品は売場からはずす。それはパレートの法則など知らなくても、商業者なら誰でも経験的に学んでいる常識でしょう。
でも常識というものは、時代とともに変化することがあります。売れない商品は撤去するのが、これまでのセオリーでした。でも今は、めったに売れない商品が売上を支えるという、これまでの常識を超えた現象が見られることもあるのです。
ロングテール現象
「二・八の法則」をはずれた顕著な現象は、インターネット上で起きました。ネットで書籍やCDを販売する『アマゾンドットコム』が典型例です。アマゾンは世界最大の電子商取引サイト。はじめは書籍を販売するオンライン書店でしたが、品揃えを急速に拡大。現在ではCD、DVD、電化製品、玩具など、広範囲な商品を扱う総合サイトになっています。
肝心なのは、品揃えの深さです。ベストセラーや定番書籍だけでなく、年に数冊も売れないようなレアな書籍まで取り揃えることで、「アマゾンなら何でもそろう」という安心感を提供したことです。
すると、一般の書店で手に入らない書籍を探す人が、アマゾンを訪れる確率はぐんと高くなります。その結果、普通では売れない書籍がポツポツと売れ、その累積が、売れ筋商品に匹敵するか、あるいは抜いてしまう、という現象が起きます。これが「ロングテール現象」です。
売上貢献度のグラフは、ちょうど尾長鳥が尾を伸ばしたような形になります。長い尾の先端の方は、ほとんど売れない商品。しかし、尾が長く伸びれば伸びるほど、その合計は、売れ筋商品の合計と遜色ないものになります。ちりも積もれば山となる、ということわざがありますが、死に筋商品とも思えるアイテムが、差別化と、新たな需要喚起に役立つこともあるという、いい事例でしょう。
オンリーワン店を目指せ
しかし、めったに売れない商品は不良在庫と紙一重です。実店舗で、しかも中小小売店では、アマゾンのまねは絶対無理でしょう。でも、あらゆるアイテムをそろえるのでなく、惚れこめるアイテムをそろえる、というコンセプトなら可能なはず。それを実践して快進撃を続けているのが、本誌3月号で紹介された『ヴィレッジバンガード』です。特定の趣味のジャンル(コミック、車など)に関して深い品揃えをすれば、そのジャンルの好きな人が、必ず来てくれるものです。
さて一般の商店でも、レアな商品でオンリーワン店を目指す道はありそう。1万人のうちたった1人しか興味を示さない商品でも、全国が商圏なら、1万個以上の売上が見込めることになります。長い尾の先に隠れている、潜在ファンの多い商品。それを発見できれば、「売上の八割を占める二割の商品」の一つに成長させることが可能でしょう。