《第114話》

弱点の心理学

 使用中のパソコンが突然壊れました。ハードディスクの破損ですが、買ってまだ1年3か月しか経っていません。いろいろ調べてみたところ、このメーカーの製品は安いけれど、その分内部の機器が脆弱で、マシントラブルが多いということが分かってきました。

 もちろん購入するときは、そんな情報は店頭表示されないし、お店のスタッフが説明してくれるはずもありません。だから、私と同じように、安さにひかれて購入し、突然の故障に見舞われて困った人は、全国にたくさんいそうです。

 見た目の能力がほぼ同じで、価格が他のメーカーより安ければ、飛びつく消費者はたくさんいます。たぶん、このメーカーは売上を快調に伸ばしていることでしょう。しかし、見えないところを安い部品で仕上げて、その結果故障が多発しているとしたら、いったいどんなことが待っているか。

 きっとユーザーは、購入時は安くても、「修理費を考えれば、もっといいパソコンを買うことができた」と気づくはずです。果たして、その人が、この店からこのメーカーの製品を、再度買いたいと思うでしょうか。たぶん「二度と買うものか」と思う人のほうが多いはずです。

 弱点を隠した方が売れるのは確かです。でも、長い目で見れば、それはマイナスの結果を招くでしょう。
 それなら逆に、弱点を最初から消費者に示す、という手もありそうです。

かっこよさで売るバイクハーレー

 二輪車に乗る人のあこがれは、大型バイクのハーレーダビッドソンでしょう。一台の平均単価は200万円ほどしますが、「いつかはハーレーに乗りたい」と思っているバイク乗りは多いはずです。

 でも、日本製のバイクと比べれば、ハーレーは高性能でないし、スピードも出ません。その上、高価格です。そんなハーレーが、なぜ熱狂的なファンが大勢いるかといえば、弱点を隠さなかったからではないでしょうか。

 「ハーレーは日本のバイクほど高性能ではないし、スピードも出ません。それに価格は高いです」という弱点をすべて見せてから、
「でも、かっこいいでしょ!」といえること。
それがハーレー人気の源に思えます。

 ハーレーはバイク好きのためのメーカー。工場の品質管理能力や、製品のコストダウン能力では、日本のバイクメーカーにかないません。そこでハーレーは、弱点を逆手にとったのです。低価格、高性能を求める路線を捨てて、デザインや排気音などの“かっこよさ”に、徹底してこだわることをコンセプトにしたわけです。

 ハーレーの商品開発の三原則は、『ルックス、サウンド、フィール(乗り心地)』。熱狂的なハーレーファンは、性能などの弱点を最初に容認した上で、ハーレーのかっこよさを求めているものなのです。

情報公開が信用を生む

 たとえば、傘を買う場合。次のどの店から買いたいと思いますか。
A店「この傘はとても軽いです」
B店「この傘はとても軽いですよ。その分ちょっと強度が弱いですが」
C店「この傘は強度が弱いんです。でもその分、軽くて持ち運びしやすいです」

 長所だけ言う店。長所を言ってから弱点を小さく付け加える店。商品の弱点を最初にお客に明らかにする店。おそらく多くの消費者は、C店の対応に好感を覚えることでしょう。

 弱点を明かすのは恐いことです。でも消費者の側からすれば、商品の弱点と長所、どちらも明らかにしてくれる店なら、「この店は信用できる」と思えるはず。それに弱点を承知で買えば、弱点に気をつけて使うので、結局は長持ちするでしょう。

 どうです。
 これからは商品の弱点を、フランクにお客様に話してみませんか。








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