《第115話》

パラドックスを見抜け

 日銀がゼロ金利を解除しました。景気が回復し、デフレ脱却したことによる措置です。ただ、その決断理由にはいささか疑問が残ります。“景気回復”は主に、大都会や大企業を中心にした話。商業、特に中小小売店には実感が非常に乏しいからです。
もともとゼロ金利政策は、景気刺激効果を与えるための措置でした。金利が下がれば、お金を借りる人が増えるし、消費者も預金するよりお金を消費に回す、というのが通説です。でも実際は、そうはなりませんでした。金融機関は不良債権回収にやっきで貸し出しに力を入れないし、企業は有利な資金運用法が見当たらないので、融資を受ける意欲が湧かなかったからです。
また消費者も、低金利だからといって、預金を引き出して大量消費に走るようなことはなく、“たんす預金”が増えました。とするとゼロ金利措置は目的に反し、景気抑制効果を生んでいたかもしれません。
景気回復のための方策が、逆に景気を抑制する…そんなパラドックス(逆説)が起きるのは、実はよくあることです。商業の世界でも、建て前を鵜呑みにしないで、観察眼が必要な場面はたくさんありそうです。

まちづくり三法の結果は
八年前にまちづくり三法が制定されたとき、商店街やまちづくり関係者は、これで中心市街地が活性化するものと希望を持ったはずです。各地で基本計画が策定され、次々とTMO(まちづくり機関)が設立されました。元気な街並み再生が、各地で達成されるものと期待されました。
しかし、そうはなりませんでした。新法制定後は、大店法時代以上のペースで郊外大型店が進出。それが中心市街地空洞化に拍車をかけました。各地のTMOは真剣に活性化策を模索してはいますが、進路が見つからず苦悩しているTMOが多いのが実情です。
新しい方策がスタートするとき、私たちはどうしても、その方策の大義名分と、メリットに目を奪われます。でもたいていの方策には弱点や盲点があるし、それに人間は建て前より本音で動くものです。いくら建て前がすばらしくても、実際の動きは本音の方に流されるでしょう。中心市街地の規制を強化すれば、大型店は郊外にシフトするし、消費者の流れも郊外志向になる……デベロッパーと消費者の本音を把握していれば、そんなことは分かっていたはずです。
郊外大型店の脅威に対し、商店街が法律で保護され、公的助成を得たい気持ちは痛いほど分かります。でもこれまでの歴史を見れば、保護や助成を得ると商店街は弱くなるというパラドックスを、多くの商店街が経験してきたはずです。活性化のため、アーケードやカラー舗装を整備した先進商店街の多くが、客足の激減に悩んでいることでしょう。

逆手流発想
まちづくり三法がうまく働かなかった反省から、「改正まちづくり三法」が制定されました。今度は国の側も、効果の期待できる計画を優先して支援するのが基本姿勢になります。これまでのように、他と横並びの企画では、審査のまな板に乗ることさえ難しいし、成功の可能性も低いのは確実です。
そこで、逆手流発想をしてみてはどうでしょう。たとえば「他で絶対やらないことをやる」「零細商店だからできることをやる」「店主たちが高齢化しているからできることをやる」いう風に。つまり自分に有利なパラドックスで、活動できる舞台をつくることです。
大型店の弱点を見抜き、消費者の本音を把握すれば、中小小売店や商店街ならではの方策が見えてくるはず。そのためには常識を捨てて、逆手流発想をしてみませんか。









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