《第117話》
弁当理論
売上はいかがですか?元気に商いをしていますか?「どうも思わしくない…」などとぼやいて何もしなければ、店の活気はますます降下して、お客様に見放されてしまうでしょう。まずはカラ元気でもいいですから、快活な動作で、店をお手入れしてください。色あせたPOPの交換、窓ガラスの掃除、やることはたくさんあるはずです。
そこで、店の掃除をしながら、商品陳列をじっくり眺めてみてください。売れている商品、ほとんど売れない商品、いろいろ混じっていることでしょう。でも、陳列される商品には、古い、新しい、高い、安いに関係なく、すべてに共通していることがあります。それは、いま店に並んでいる商品はどれも、まだ売れていない商品であるということです。
店に並んでいるのは、まだ売れずに、お客様に買われるのをじっと待っている商品。言い換えれば、売場にあるのは常に“売れ残り商品”ということになります。(ちょっと言葉の響きが悪いとは思いますが、まあ我慢して読んでください)
商品管理とは、売れた商品が消えた後の、売れ残っている商品の管理。そういう見方はちょっと情けない気持ちがするかもしれませんが、実はそうではありません。だからこそ、腕の見せどころが生まれるのです。
お母さんの弁当
多くの家庭で、よく見かける朝の風景です。お母さんが家族のため弁当を作るシーン考えてみてください。お子さんに持たせる弁当、夫が会社で食べる弁当、それらのおかずには、何が使われるでしょうか。たぶん買い置きの冷凍食品か、あるいは前日や朝食のおかずの残り物が多いはずです。
でも、残り物であっても、お母さんは味付けを変えたり、彩りを工夫することで、残り物からおいしそうな弁当を作っているのではありませんか。しかも、栄養のバランスも、しっかり考えられています。
残り物を使っても、見た目にきれいで、おいしくて、栄養バランスのいい弁当は作れる。それがお母さんの弁当です。そこに込められている最大の秘密は、お分かりですね。言うまでもなく『愛情』です。買い置きの冷凍食品であっても、前日の残り物であっても、ひと手間加える愛情があれば、ふたを開いたとき、家族の笑顔が生まれる弁当を作ることができるものなのです。
しかも愛情弁当なら、経費もそれほどかかりません。そして、日ごとに見た目や味付けが変わりますから、毎日食べ続けても、飽きることがありません。高級料亭の弁当に、味ではかなわなくても、『経費』『栄養バランス』『食べ飽きない』という点なら、十分に勝っていると考えられるのではありませんか。
弁当発想の売場
そこで商店の売場にも、お母さん弁当の発想が応用できないものでしょうか。小さな店でも、お客様に喜ばれる陳列で、商品群を魅力的に見せる工夫です。たとえばドレッシングは調味料の棚に置くより、朝採りレタスと並べておいて、新鮮サラダを提案するという具合に。
さらにお母さんたちは、ウィンナをたこの形にしたり、りんごをウサギの形にして、子供たちにおいしく食べてもらおうと考えます。そういうひと手間が、商店の売場にも欲しいところです。商品の美しい陳列。見て楽しくなる陳列。商品を手にとりたくなる陳列。それが売場に活気を生むと期待できそうです。
そういう手間暇を惜しまない自分に変わるには、どうすればいいかは、もうお分かりですね。そう。お母さんが弁当に愛情を込めるように、商品とお客様への愛情を持って、売場を見つめなおせばいいのです。