正しい先進地視察法
先日、講演に訪れたS商工会議所で、青年部の方から質問がありました。
「商業の先進地を視察したいけど、この市と似た規模で、活性化している事例はないでしょうか?」
実に真剣な質問です。でも、私はあえて、参考になる事例を提示しませんでした。それには、苦い理由があるからです。
活性化事例に学ぶために、先進地を視察したい気持ちは立派です。昔は『先進地視察』というと、半分は(ひどい場合はほとんどが)観光に費やされるという視察が結構ありました。今回の青年部の要望は、そういう遊び半分のものではなく、実に真剣なものです。
「学ぶ」の語源は“真似(まね)ぶ”。すぐれた事例の真似をすることが、学ぶの原点です。先進地を訪れ、その手法をまねることは、まったく正しいことのように思えます。
そこで以前は、「似た規模の事例を教えて欲しい」という要望に応え、積極的に情報提供をしてきました。でも、その結果はどうでしょう。先進地に学び、その手法をみごとに取り入れて活性化した事例には、ほとんど思い当たらないのです。
違いばかりが見える
比較的似ている規模のまちを紹介したとしても、まったく同じ条件のまちは一つもありません。そうすると、自分のまちとの類似点や、活性化に応用できるポイントを考えるより、自分のまちとの違いを探すほうに目が行きがちになるものです。
視察を終えて帰ってきても、
「うちのまちの方は温泉がない」
「交通の便が違う」
「大きな製造業があちらは多いから」
と、活性化したまちと、活性化しない自分のまちの、違い探しになりがちです。似た規模の事例に学ぶはずだったのに、自分のまちが活性化しない“言い訳”探しに、いつの間にか変わってしまうのが恐いところです。
結局、撮ってきた写真を添付した報告書を作成して、先進地視察終了。あなたのところにも、生かされなかった視察研修の報告書が何冊か残っているのではないでしょうか。
だから私は、S商工会議所の青年部には、似た規模のまちの事例を、あえて教えなかったものです。では、先進地視察は意味がないのかというと、そんなことはありません。視点を変えて、“正しい先進地視察”を実施すればいいのです。
情熱と魅力に学べ
先進地視察には、行く先のまちの大きさはほとんど関係なし。なぜなら、学ぶべきだったのは、実施したハード事業やイベントの内容よりも、そのまちを活性化に導いたリーダーたちの姿だからです。
衰退した商店街などを再生するのは、とてつもないエネルギーが必要な事業です。そういうまちには、燃えるような情熱を持ったリーダーたちが、必ずいるはず。無気力な人や、足を引っ張る人がいても、くじけないで先頭に立って頑張る人の存在があってこそ、活性化が推進されたのに違いありません。
そして、そういうリーダーたちは、必ず魅力的な人物であるはずです。人間的に信頼できるから、他の人たちも歩調を合わせて活性化に取組み、そして成功への道を歩めたのでしょう。
そう。先進地視察をするなら、活性化の先頭に立ってきた人たちに会うことです。その人たちの情熱と魅力が、一番の勉強。これから先進地視察を企画するときはぜひ、「先頭に立って頑張った人に、会わせてください」とお願いしましょう。アーケードやイベントの写真を撮るのを、視察と思わないように。写真は、送ってもらえば用が足せることです。
