《第121話》

円の投票


 
 
 「郊外大型店に、お客をすっかり奪われてしまって…」

 各地に講演にうかがう度に、全国どこの商店街でも聞かれる言葉です。客足が減り、廃業店が増えていけば、そういう言葉を吐きたくなる気持ちは、分からないではありません。

 でも、「お客を奪われた」といいますが、それはほんとうでしょうか?郊外店の従業員が、商店街に来たお客を無理やり郊外に引きずっていく光景など、見たことがないはず。だから郊外店は決して、お客を奪っているのではありません。消費者が自分の意志で、郊外店を選んでいるものです。

 いざなぎ景気を超える景気が続いている、とは言われても、多くの消費者には豊かさの実感は薄いでしょう。限られた家計でやりくりするために、消費者は店や商品を比較し、選別します。価格や品質、品揃えで商店街より郊外に惹(ひ)かれれば、郊外で買い物を済まし、次第に商店街には足を運ばなくなるでしょう。それが商店街サイドから見れば、「お客が奪われた」ということになるものです。

 実はこの光景は、今年各地で目にする社会的なできごとと、非常によく似ています。それは“選挙”です。

落選は自分のせい

 市町村議員選挙、国会議員選挙、首長選挙など、どのような選挙でも有権者各自の票は、一つの選挙に一票だけです。そしてどんなに僅差であっても、開票結果によって、次点以下は負け。新人の登場で、現職が敗れることも、よくありがちです。

 そういうとき、敗れた現職は「新人に票を奪われた」と内心思うでしょう。でもそれは勘違い。票を奪われたのではなく、有権者がそれぞれの意志で、支持する候補を変えたにすぎません。だから落選は、有権者の支持を失った“自分のせい”であり、新人の当選は、それを証明する結果だったというべきです。

 さて、消費者の消費行動には、“円の投票”という言い方があります。限られた財布の中身から、どの店で買うか、何を買うかは、まさに選挙でどの候補者に投票するかという行動と、合い通じるものがあるからです。
多くの消費者から支持を受けた店、人気の商品は、たくさんの“円の投票”を獲得します。一方、支持を失った店、流行の去った商品は、“円の投票”が減っていくでしょう。選挙と買い物は、人間の行動として見た場合、かなり似ているのです。
それなら、選挙の戦略を、商店街や中小小売店の活路にも応用できるのではないでしょうか。そう。販売競争という選挙に当選する方法を探り、再度消費者の“円の投票”を獲得すればいいのです。

地盤を築く

 郊外大型店と正面から戦うのは、巨大政党の公認候補者と、国政選挙を戦うようなものでしょう。まず勝ち目はありません。でも、市町村議員選挙ならどうでしょう。当選に必要な数百票を得られれば、それで十分のはず。商店街や中小小売店の場合も、そういう地盤を築ければ、地元で安定した商いを続けることは、決して不可能ではないはずです。

 それには、まずは郊外店の苦手な“手間暇”プラスで、支持層の信頼を厚くすること。それから“オンリーワン”と“先回り”で支持層の拡大を図るのが有効でしょう。店が小さいからできることは、まだまだ残されているのです。

ただ…。そういう地盤の再構築作業が必要なのに、それさえあきらめているのが、多くの商店街、中小小売店の実態でしょう。ぜひもう一度、誇りを取り戻し、立候補に立ち上がってほしいところです。その勇気がある方には、喜んで知恵をお分けいたしますので。





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