機関車理論
「まちづくり三法が改正されても、商店街の衰退は止まりませんよ。結局は地域の商業は見殺しなんでしょうかね…」
関係者の嘆息が、各地の商店街を訪れるたびに聞かれます。ただし、いくら商店街の悩みが深くても、それだけで行政の支援は得られません。現在の商業政策は、やる気のある商店街、成果の見込める計画を、重点的に支援するのが国の方針。支援が欲しいなら、行動する意志を表すことが必要です。
ただ、それは分かっていても、それが難しいのが商店街の実情でしょう。一つの企業なら、トップの方針で企業全体が動きますが、経営者の集合体である商店街の場合は、そうはいきません。特に、いつ廃業しようかを考えている高齢の店主や、組織にしばられたくないマイペース店主がいれば、足並みをそろえるのはなお困難なことでしょう。
しかし本来、商店街活動の正しい推進は、個店の売上アップをもたらしてくれるもの。個店にとっては、単なるおつきあいや時間のムダではなく、取り組む意義は大いにあるのです。そのためのヒントは『新幹線』です。
新幹線はなぜ速いか
SL(蒸気機関車)の時代から見れば、時速200キロを超える新幹線は驚異的なスピードです。ではなぜ、新幹線は速く走れるのでしょうか。
理由はいくつもあります。広軌(線路幅が広い)であること、電気を効率的にエネルギーに変えること、車体の空気抵抗が少ないことなど。でもそれ以上に、SLや在来特急とは決定的に違うポイントがあります。それは、各車両が動力輪を持っていることです。
在来線は、先頭の機関車が、後続の客車や貨物車を引っ張る仕組み。それに対し新幹線は、客車ごとにモーターが付いていて、動力輪を持っています。だからすべての車両が同時に動き出し、素早く加速。そして200キロを超えるスピードが得られるものです。
先頭の機関車と後続の車両が行動を合わせれば、車両すべてが大きなスピードに乗って快走できる。新幹線のこの発想が、商店街活動にも応用できるでしょう。
たとえば、一店逸品運動で輝く商店街は、各店のそれぞれの逸品づくりで。イベントで注目される商店街は、個店イベントの工夫で。スタンプやポイントカードを実施する商店街は、各店が出し惜しみしないことによって。こうした個店の協力は、商店街全体の活力アップを果たすと同時に、自店の売上をさらにアップ。先進商店街とは、個店それぞれが、そこに気づいた商店街といえそうです。
SLと「この指とまれ」
「その理屈は分かるけど、商店街が足並みをそろえて行動するのは難しいと思う」
そういう声が聞こえてきそうです。たしかに、その通りでしょう。そこで再度、機関車を例に、商店街が生まれ変わる手段を考えてみましょう。
足並みのそろわない商店街では、新幹線方式は無理。そこで、SL方式を考えましょう。まずは、活性化を心から願う人がけん引役になり、そこに「店を何とかしたい」という商店主たちが集まって、有志で『繁盛行き』の列車を構成すること。商店街のルールや習慣にしばられず、やる気のある人だけが集まって、この指とまれ方式で動き出すことです。
たとえそれが少数の参加で、成果がわずかだったとしても、参加店は、動いた分だけは確実に前進したことになります。それによって、にぎわいの楽しさを思い出し、売上の手ごたえを感じれば、さらに活動を進めることができるでしょう。さあ、この機関車理論に賛同いただいた方はぜひ、けん引役のSLを目指してほしいと、心から願っております。
