足し算戦略
赤白青のサインポールでおなじみの理容業界では、通称「安床(やすとこ)」と呼ばれる激安店が全国的に増えています。料金が従来の理髪店の半額以下であることと、散髪だけなら十五分程度で済む手軽さが受けているものでしょう。
安床の増加に加え、若い男性は理髪店でなく、美容室に足を運ぶ人が増えました。また、従来の顧客にしても、「散髪は月一回」という昔の常識は消え、散髪の頻度は減少の一途。これらの複数の理由が重なり、既存スタイルの理髪店の経営は厳しさを増す一方です。
でも、そういう状況下でも、快調な営業を続ける理髪店もあります。たとえばSサロン(東京)は、髪を整えることに加え、頭と体をリラックスさせるサービスが人気。フットケア等のリラクゼーションや、顧客をもっとかっこよくする技術の提供などで喜ばれています。髪を切るという本来の業務に加え、お客の癒しや、男前度を上げるというメニューの充実。そうすれば、たとえ従来の料金より割高になったとしても、そのサービスが欲しい人は足を運んでくれるものです。
小売業界でも、値引きが集客力の要と考えられ、厳しい価格競争が展開されてきました。でも零細商店が、値引きで長期戦を続けるのは困難。それなら値引きという引き算発想ではなく、新たなサービスをプラスする『足し算』に活路を求めてはどうでしょうか。
酒販店の活路
小売業の中で、零細店が苦戦を強いられている業種の一つが酒販店です。酒DS(ディスカウント)店、ドラッグストア、ホームセンター、コンビニ等、消費者は"まちの酒屋以外"で酒やビールを買うことが多いはずです。消費者にとって、価格では酒DS店などが安いし、食卓のシーンを考えるなら、おでんや惣菜も買えるコンビニが便利。従来の酒販店から消費者の足が遠ざかるのは当然かもしれません。
では「まちの酒屋さん」は、どうしたらいいのでしょうか。ひとつは、専門店としての品揃え充実があります。乙類焼酎や日本酒で、ファンの心をつかむこと。「あの店はいい酒をそろえている」と信頼され、支持を得ることが大切でしょう。
そして、もうひとつが、足し算戦略。値引きという引き算ではなく、お客様に喜ばれる満足を、どんどん足し算していくという発想です。酒DS店やコンビニには絶対できない、まちの酒屋だからできるサービス。それをどんどん増やしていけば、そこに酒販店の活路が拓けそうです。
面倒をいやがるな
では、小さな酒販店だからできる足し算サービスには、どんなことが考えられるでしょうか。たとえば高齢者世帯向けには、次のようなサービスは喜ばれるでしょう。
『缶ビール一本でも配達』
高齢者で、外出が困難な世帯にとっては、ありがたいサービスになりそうです。
『配達時に空き缶、空きビン引き取り』
資源ゴミや不燃ゴミの日を気にしないで、引き取りしてもらえるなら、感謝されるサービスになるでしょう。
「そんな面倒なことはやりたくない」「手間はかかるが利益にならない」と思う人もいるでしょう。でも、「面倒だけど、お客様が喜ぶならやってみよう」と考える方もいるはず。酒販店にかぎらず、面倒をいやがらずに実践できる方は、ぜひトライしてみてください。
さて。足し算サービスはほかにもたくさんありますが、もう書くスペースがありません。もっと別の足し算戦略については、あなたのまちに講演会でお邪魔した際にでも、お伝えすることにします。
