《第135話》

がんばらない経営



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 私自身の反省を込めての話です。
これまで、店舗運営にアドバイスした件数は、かなりの数にのぼります。その際はできるだけ無理な提案は避け、すぐ実践できるヒントをお伝えするよう心がけてきました。

 それでも……。
事後フォローでうかがってみると、「まだ取り組んでいません」、あるいは「途中でやめました」と答える方が結構います。お前の指導方法が悪いから、と言われればそれまでですが、できるはずのことを、なぜやらないのか。その理由も考える必要がありそうです。

 もしも経営者が、もともとずぼらな性格なら、何もしないのも納得できます。その場合は、業績低迷は本人の責任と言わざるをえません。

 でもそうではなく、誠実な経営努力にかかわらず、売上ダウンに追い込まれたケースはどうでしょう。一般的に、がんばった人が、必ず成果が得られるかというと、そういうことはありません。がんばっても、うまくいかないことは多いし、そういう体験が続けば、「どうせ何をやってもダメだろう…」という気持ちになることは多いものです。

 それなら、従来のがんばり方を変えてみてはどうでしょう。視点を変えたところに、意外な活路が拓けるかもしれません。

塚原跳びの誕生

 かつて日本の体操界が、名選手ぞろいだったころの話です。塚原光男選手は、他の種目ではいい成績を出せるのですが、跳馬が苦手という弱点がありました。塚原選手は跳馬の猛練習を重ねました。でも、才能や体格、体力などは、努力だけでカバーするのは困難。スポーツの世界では、いくら練習を重ねても超えられない壁があるものです。

 がんばっても成果が得られない。だからといって、体操人生をあきらめたくない。そんな塚原選手に残された道は、他人がやらない跳び方への挑戦でした。ある日ぼんやりと、女子選手たちの練習風景を見ていて、はっと気づきました。男子は飛距離で高得点をねらうため、進行方向を向いて着地します。しかし女子選手は、飛形を美しく見せるため、進行方向に背中を向けて着地します。

 塚原選手は、それを自分流にアレンジしたらどうかとひらめき、他の男子選手がやらない、後ろ向き着地の技を磨きぬきました。そしてその後はオリンピックでの団体優勝など、数々のメダル獲得を果たします。この跳び方は、多くの体操選手も取り入れるようになり、後に『塚原跳び』と名付けられました。

 どんなにがんばっても、ライバルにかなわないなら、ライバルがやらないことに挑戦。そして、いち早くオンリーワンの地位に到達する。それを実行したことで、塚原選手の名前は体操の歴史に刻まれ続けることになったものです。

経営を楽しむ

 「もっとがんばらなければいけない」という気持ちでがんばって、それでも成果が見えないのはつらいものです。がんばりが長続きできない経営者には、そういう理由もありそうです。そこで、体操の塚原選手が跳び方を変えたように、これまでのがんばりの方向を変えてみれば、活路が見えてくるのではないでしょうか。

 そして、もっといいのは、経営を楽しめることでしょう。歯をくいしばるような努力はつらくても、楽しい努力なら平気で続けられるものです。そのためのポイントは、お客様が得すること。店と顧客がともに笑顔になれる方策なら、必ず喜んでもらえるし、ずっと続けられるものです。

 無理にがんばるのは、いつか息切れします。どうぞ笑顔の経営を目指されますように。







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