《第136話》

耕す商業への転換



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 上り下りの続く坂道よりは、どこまでも平らな道のほうが、ずっと歩きやすいものです。経営も同様に、売上が上昇降下の変動が激しいよりは、一年を通じてほぼ安定して推移するほうがありがたいでしょう。でも残念なことに、多くの業種は季節によって、繁忙期と閑散期があるのが普通。売上がガタンと落ち込む時期をどうやって乗り切るか。それが毎年、多くの商店主にとって、頭の痛い課題であると思います。

 閑散期対策にDM等の販促強化は一つの策ですが、効果は薄そうです。たとえば、夏場に売れない商品は、暑い時期に消費者が、その商品を買う気が起きないというだけの話。いくら宣伝に力を入れたところで、欲しくないものを買う人はそうはいません。

 それならその時期に、欲しくなる商品やサービスに転換することが考えられます。たとえばお茶。夏には熱い日本茶が敬遠され、冷たいものが求められます。そこで茶舗では、夏向けの商品として『抹茶ソフト』を提供する店が現れるようになったものです。お茶という商品ジャンルの中でも、季節変化に対応することができる事例です。

 でも、そういう対応の難しい業種は、どうしたらいいでしょう。その場合は思い切り発想を変えて、売上閑散期を"耕す時期"と割り切ってみてはどうでしょうか。

テーラーの挑戦

「7月、8月は魔の季節です。この時期の売上確保は、いったいどうしたらいいのでしょうか?」

 と、仕立てが中心の高級紳士服店経営者から相談を受けました。夏枯れする代表的業種の一つが、紳士服店です。クールビズなどの商品はあるとしても、夏場にはスーツを着たくない、というのが多くのビジネスマンのホンネですから。

 この店は例年、DMは実施してきました。でも、レスポンス率は低いまま。いくらお得なセールをしたところで、猛暑の時期にスーツを作りたいと思う人は、そうはいません。そこで発想を変えて、真夏は、商品を売り込む時期ではなく、顧客満足を耕す時期にすることを提案しました。

 顧客の家のクローゼットの中には、この店で仕立てたスーツが何着もかかっているはず。その中には、ずっと着ていないスーツもあるに違いありません。「それを無料点検して歩いてはどうでしょう」と提案したものです。

 体型が合わなくなって着られないスーツ、小さなカギ裂きが気になって、着なくなったスーツ、でもそれらが、もともとお気に入りのスーツであったなら、仕立て直しの提案は、必ず喜んでもらえるに違いありません。この店は、この夏、顧客のクローゼット無料点検サービスで忙しくなりそうです。

狩猟から耕作へ

 有望な商圏に出店する。DMやチラシでお客をたくさん呼ぶ。店が衰退期に入ったら撤退する。たしかにそれは商業の基本ですが、見方によっては、狩猟民族が獲物を求める光景を連想させます。

 獲物のいそうな場所に狩人が群がり、獲物をとりつくしたら、去って行く。それは合理的なようでいて、不安定な要素がぬぐい切れません。そういうやり方では、獲物のとれない冬をどう乗り切るかという不安や、獲物をいずれはとりつくすという不安が、常について回るからです。

 だから商業も、耕作する農業をイメージしては、と考えるものです。商圏を育てる発想があれば、毎年安定した収穫が期待できるからです。たしかに、顧客満足という施肥は手間がかかる作業ですが、それがいずれ豊かな稔りをもたらしてくれると信じます。









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